土地の境界トラブルの解決策と流れ
境界には、2つの意味があります。
まず、境界には、登記制度に反映されている地番と地番の境という意味があります。この境界のことを「公法上の境界(筆界)」といいます。
公法上の境界は、国が決めるべき事柄であって、境界が問題となっている土地の所有者間で決定出来る性質のものではありません。
したがって、隣接する土地の所有者間で取り決めをしても、それによって境界線が決められるわけではありません。
公法上の境界について争いがある場合は、境界確定訴訟(筆界確定訴訟)という訴訟を提起し、隣接する土地を挟む境界を裁判所が確定させることになります。
境界の2つ目の意味としては、「私法上の境界」と呼ばれるものがあります。これは、土地の所有権の範囲を問題とするもので、隣接地との所有権との境目を意味します。これは、隣接する土地の所有者間の取り決めによって決めることができます。
土地の境界トラブルとして起きやすいものとして以下の4つがあります。
1.取得時効が完成して従前の境界と異なるケース
2.隣接地の建物が越境したケース
3.越境建物を放置したケース
4.枝や根が越境してきたケース
●1.取得時効が完成して従前の境界と異なるケース
他人の所有地であっても、10年あるいは20年間、継続して占有していた場合、その占有していた土地の所有権を取得することができます(これを「時効取得」という)。時効により所有権を取得した場合、その所有権について登記をする必要があります。
一筆の土地の一部について所有権を時効取得した場合、まず分筆する必要がありますが、分筆するには、従前の所有者の協力が必要になります。
協力が得られない場合は、訴訟を提起します。分筆されたら、その境界に境界標を設置することになります。
●2.隣接地の建物が越境したケース
土地の所有権は、土地上の空間にも及んでいるため、例えば、隣接地の建物の庇(ひさし)などが境界を越えて建設される場合は、その建設の中止を求める必要があります。任意に建設工事を中止してもらえない場合は裁判所に申立て、建設工事禁止の仮処分命令を得る必要があります。
また、その後に所有権侵害を理由とする妨害排除請求訴訟を提起し、越境部分の取り壊しか損害賠償を求めることになります。
●3.越境建物を放置したケース
境界を越境する建物がある場合、越境部分が小さいからといって放置しておくと、その部分の所有権を失う恐れがあります。
これは前述した所得時効が成立する可能性があるためで、10年間ないし20年間という一定期間が経過すると時効が完成してしまいます。
時効を完成させないためにも、時効の更新(中断)を行い、取得時効期間の進行を止める必要があります。時効の更新は例えば、訴訟を提起して所有権侵害を主張するなどの方法で、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定すれば、生じます(平成29年改正民法147条1項・2項等)。
●4.枝や根が越境してきたケース
木の根が越境している場合、民法はその根の所有者の承諾を得ることなく、勝手に切り取ってもよいと規定しています(民法233条2項)。
これに対し、木の枝が越境している場合は、木の所有者の承諾なく伐採することはできず、期の所有者に対して、越境部分の伐採を請求することができます(同法1項)。伐採を請求したのにもかかわらず、伐採に応じてもらえない場合は、裁判所にその伐採を求めて訴訟を提起することになりますが、枝の越境がごくわずかであるような場合は、権利の濫用(民法1条3項)とみなされ、切り取りが認められないこともあるため、注意が必要です。
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